授業中、ガラッと荒々しく開いた音楽室の扉。ぴっと時が止まったような緊張感。登校日数が足らず、留年していたS君初授業でした。
新米先生2ヶ月あたりで、全く対応がわかりませんでしたが、S君は、ズンズンわたしの目の前にやってきて、たったひとこといいました。「教科書あらへん。どこすわるねん。」ちょっとドキドキしながらも、わたしの教科書を彼に渡し、授業再開。
ふーっ。授業後 彼を準備室に呼び、「わたしなぁ まだ大学でたとこやから、何の教科でも覚えているかもしれへんから、わからんことあったら、なんでも聞きにきてや」といいました。
彼は、「俺のことなんか他の先生は、どうでもいい人ばかりやで。先生だけやで。そんなこというたん」。それが最初で最後の彼との会話でした。
毎日家庭訪問していた保健室の先生がわたしに、いっていました。「萩原先生は、結婚してるんか?」そんな質問ばかり保健室の先生にするようになったS君。聞いたかぎりでは、しっかり就職して自立の道を歩んでいると
か。
人間の出会いやそこで生まれた一度だけの会話がお互いを支えたり、成長発展になる体験をS君にさせてもらいました。いまでも彼の成長を祈っています。
2月19日萩原由美
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